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そらに描いた物語
H19年11月26日〜。個人の趣味による二次創作メインの小説(+お題)サイトです。各原作者様・出版社様・企業様とは全く関係ありません。同人要素を含んでおりますのでご注意ください。
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好きだ。紫苑はとてもシンプルにそう思う。
紫苑はネズミを見つめていた。
ネズミはこの地下の家にいるときは大抵読書に勤しんでいる。それは現在も例に洩れず。その姿も絵画のように様になっていて、紫苑は思わずため息を吐いた。
紫苑はハムレット達に朗読を終えた後、それとは違う本を開いた。けれど、視線は美しい同居人から離れない。そうし始めてから既に時計の長針がいくつか数字を進めていた。
ぼんやりと何もなくただネズミのことがとても好きだとだけ思う。
「先ほどから熱い視線をありがとうございます。どうかなされましたか、陛下?」
パタンと本を閉じる姿さえ優美だ。
紫苑の視線を絡めとったネズミが美しく唇を釣り上げる。
「気付いてたのか。黙ってるとか意地が悪い」
「気付かないほうがおかしいだろ。あんなに熱く見つめられちゃあな。人のことをじっと観察するほうが趣味が悪いと思うぜ」
ネズミが優位をちらつかせ、喉で笑う。それさえ見蕩れそうになる。彼はそれほどまでに人を惹きつける。
「ネズミの観察は素敵な趣味だと思うけど」
本心から言えば、嫌そうな顔をしたネズミに溜飲が少し下がった。
「…で?」
「何が?」
「見てただろ」
「うん」
紫苑は問われた事実に素直に頷いた。
「何でだ?」
紫苑が彼を見ていたのは事実だ。けれど、それには特に用があったわけでも、何かを考えていたわけでもない。ぼんやりと見ていた、本当にそれだけ。
ただ敢えて言うならば、
「好きだなって思って」
そう言えば、ネズミは随分と重たいため息を吐いた。
 

天然紫苑さん。
きっとネズミは大変だと思う。

2011/04/10
 
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