忍者ブログ
♥ Admin ♥ Write ♥ Res ♥  
そらに描いた物語
H19年11月26日〜。個人の趣味による二次創作メインの小説(+お題)サイトです。各原作者様・出版社様・企業様とは全く関係ありません。同人要素を含んでおりますのでご注意ください。
 92 |  90 |  89 |  88 |  87 |  85 |  84 |  83 |  81 |
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

アレンは小さく息を吐いた。吐息は白く宙に漂い、その軌跡を目で追う。その鼻先や頬は赤く染まっている。
大した上着も着ず、白い景色の中で立ち尽くす。黒いベストに雪が積もる。
それでも、アレンには冷たさも寒さも隔たったように朧気にしか感じられなかった。
ティムキャンピーが心配そうに傍を飛ぶ。度々アレンの服を引っ張ったが、アレンはそれに大丈夫だよと一度答えたきりで、ただぼんやりと立っていた。
「モヤシ」
背後から腕を掴まれる。
振り返ると犬猿の仲の同僚が顔をしかめていて。アレンは思わずきょとんとしてしまった。
「何ですか」
あまりに意外な相手にぱちぱちと瞼を瞬かせる。
その様子に神田は白いため息を吐いた。
「来い」
そう言って踵をかえす。掴まれた手は解放されず、アレンは後を付いていく。
痛いぐらい強く握られた手首。その温かさを自覚した途端、感覚がはっきりと輪郭を持った。
「神田ー、寒いです」
「馬鹿だろ」

2011/04/01




散乱した瓦礫の上を黒衣を纏った青年が進む。崩れかけた廃墟には至るところにAKUMAとの戦闘の痕跡が残っていた。今回の任務でイノセンスは見つからず、怪奇はエクソシストを誘き出すために用意されたようで多くの悪魔だけが蔓延っていた。
彼が足を踏み入れたそこは壁がなく瓦礫の山に弱く光が降り注いでいる。その中に青年と同じくコートを纏った白髪の少年がいた。佇む少年はどこか遠くを見ており、それは人形のようで。柔らかく穏やかな表情。辺りに飛び散った破片、液体。酷いコントラスト。そこは作りものめいた箱庭の空間でしかなかった。
青年は魅入られたように少年の様子をただ見つめた。
少年の顔に笑みが浮かんだ。完全なる静寂に彼の声だけが響く。それは死者の魂への慈悲であり、愛。それこそ聖母のように。少し前まで殺し合いを繰り広げていた相手を慈しむ。
その優しく愛おしむ声音に青年は吐き気がした。
 

血の海で愛を捧げるマリア
 
2011/03/26




目の前の赤毛がへらへらと胡散臭い笑みを浮かべる。その赤く腫れた頬はさっき神田が作ったものだ。
「なあ、どんなやつなんさー」
殴られてもへらりと笑ったまま去る気配はない。その情報に関する執念は流石にブックマンと言える。
無視しようが睨みつけようが少しも怯まない。任務中でなければさらに一発と言わず殴っている。
「…砂糖漬けのモヤシだ」
神田はラビの鬱陶しさにそう吐き捨てる。
「…なんさ、それ」
ラビは不可解そうに顔をしかめた。
「要は甘くてひょろいってことか?」
眉を寄せたまま首を傾ける。その仕草に腹が立ち、神田はラビの頭をもう一発殴った。これ以上絡むなという牽制も含め。
そう、甘い。それはいつかあいつ自身を死に追いやるだろう。
ふとそんなことを考えた自分に苛立ち、舌打ちした。もう関係ない奴だ。
ただ、ずっと何も移さないガラスような瞳が脳裏から消えない。

2010/12/28
PR
この記事にコメントする
Name
Title
Color
Mail
URL
Comment
Password   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret (管理人しか読むことができません)
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
Copyright(c)  そらに描いた物語  All Rights Reserved.
*Material by *MARIA  * Template by tsukika
忍者ブログ [PR]
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
カウンター
最新CM
最新TB
ブログ内検索