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そらに描いた物語
H19年11月26日〜。個人の趣味による二次創作メインの小説(+お題)サイトです。各原作者様・出版社様・企業様とは全く関係ありません。同人要素を含んでおりますのでご注意ください。
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アレンは小さく息を吐いた。吐息は白く宙に漂い、その軌跡を目で追う。その鼻先や頬は赤く染まっている。
大した上着も着ず、白い景色の中で立ち尽くす。黒いベストに雪が積もる。
それでも、アレンには冷たさも寒さも隔たったように朧気にしか感じられなかった。
ティムキャンピーが心配そうに傍を飛ぶ。度々アレンの服を引っ張ったが、アレンはそれに大丈夫だよと一度答えたきりで、ただぼんやりと立っていた。
「モヤシ」
背後から腕を掴まれる。
振り返ると犬猿の仲の同僚が顔をしかめていて。アレンは思わずきょとんとしてしまった。
「何ですか」
あまりに意外な相手にぱちぱちと瞼を瞬かせる。
その様子に神田は白いため息を吐いた。
「来い」
そう言って踵をかえす。掴まれた手は解放されず、アレンは後を付いていく。
痛いぐらい強く握られた手首。その温かさを自覚した途端、感覚がはっきりと輪郭を持った。
「神田ー、寒いです」
「馬鹿だろ」

2011/04/01




散乱した瓦礫の上を黒衣を纏った青年が進む。崩れかけた廃墟には至るところにAKUMAとの戦闘の痕跡が残っていた。今回の任務でイノセンスは見つからず、怪奇はエクソシストを誘き出すために用意されたようで多くの悪魔だけが蔓延っていた。
彼が足を踏み入れたそこは壁がなく瓦礫の山に弱く光が降り注いでいる。その中に青年と同じくコートを纏った白髪の少年がいた。佇む少年はどこか遠くを見ており、それは人形のようで。柔らかく穏やかな表情。辺りに飛び散った破片、液体。酷いコントラスト。そこは作りものめいた箱庭の空間でしかなかった。
青年は魅入られたように少年の様子をただ見つめた。
少年の顔に笑みが浮かんだ。完全なる静寂に彼の声だけが響く。それは死者の魂への慈悲であり、愛。それこそ聖母のように。少し前まで殺し合いを繰り広げていた相手を慈しむ。
その優しく愛おしむ声音に青年は吐き気がした。
 

血の海で愛を捧げるマリア
 
2011/03/26




目の前の赤毛がへらへらと胡散臭い笑みを浮かべる。その赤く腫れた頬はさっき神田が作ったものだ。
「なあ、どんなやつなんさー」
殴られてもへらりと笑ったまま去る気配はない。その情報に関する執念は流石にブックマンと言える。
無視しようが睨みつけようが少しも怯まない。任務中でなければさらに一発と言わず殴っている。
「…砂糖漬けのモヤシだ」
神田はラビの鬱陶しさにそう吐き捨てる。
「…なんさ、それ」
ラビは不可解そうに顔をしかめた。
「要は甘くてひょろいってことか?」
眉を寄せたまま首を傾ける。その仕草に腹が立ち、神田はラビの頭をもう一発殴った。これ以上絡むなという牽制も含め。
そう、甘い。それはいつかあいつ自身を死に追いやるだろう。
ふとそんなことを考えた自分に苛立ち、舌打ちした。もう関係ない奴だ。
ただ、ずっと何も移さないガラスような瞳が脳裏から消えない。

2010/12/28
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メインが当日までに仕上がって、パソコンの前で小躍り。

談話室からの帰り道。アレンは団員から貰ったお菓子を心置きなく食べた後で上機嫌だった。丁度曲がったところで機嫌の悪そうな同僚に出くわし、目が合う。神田の標準装備は不機嫌で慣れてしまって、鋭い視線もアレンにはいつものことだ。
アレンはふと思いついた企みに小さく笑った。
「神田、happy Halloween!」
言われた相手はその言葉に心底面倒くさいと顔をしかめる。
「trick or treat?」
その対応も全く気にかけず、アレンは両手を差し出しお菓子を強請る。
「お菓子がないなら悪戯しますよ」
アレンはニコーっと楽しげに笑みを深くした。ラビならば角と尖った尻尾が見えると言いそうな笑顔だ。
神田はイベントも甘い菓子も嫌いで有名だ。勿論それを承知の完全なる確信犯の目的は悪戯に決まっている。アレンは持っているはずがないと心の中でほくそ笑んだ。
「あるぜ」
アレンはぱちくりと目を瞬かせる。その呆気にとられた表情は年相応に幼かった。
「えー!」
驚きと不満の入り混じった声が上がった。そして、じっとりと恨みがましい視線が神田に注がれる。
「なんで、持ってるんですか」
理不尽な非難に神田の眉が寄る。
「お前みたいなのがいるからな」
「…バ神田のくせに」
余計な知恵付けてんじゃないですよ
アレンはチッと舌打ちして、小さな声で吐き捨てた。ピキッと神田の額に青筋が浮かぶ。じろりと睨みつけるが、アレンにはどこ吹く風だ。
長い指がアレンの頬を抓り上げた。手の筋が浮くほどの力を柔らかい肉に容赦なく加える。
「いひゃひへす」
流石の痛みにアレンの目に涙が滲む。真剣に痛い。手を離せと抵抗を試みるが、意味をなさない。
「痛くしてんだから当たり前だろ」
「さど」
「なんか言ったか」
「いへ」
アレンは明後日を向いて、恐ろしく冷たい視線をやり過ごす。諦めたようなため息が落とされ、頬を抓る力が緩んだ。やっと解放された頬は赤くなっており、アレンは無言でそこを撫でる。
一呼吸置いて神田が口を開いた。
「trick or treat」
その言葉にアレンはにこっと笑って、
逃走を謀った。
「逃げんじゃねぇ」
神田にしっかりと襟を掴まれ阻まれる。つまり、逃走の勢いは全て首への負荷となる。
「神田、首っ、首締まってるっ」
仕方なくアレンが体を元に戻すと、襟を掴む手が離れた。締まっていた気管に空気が流れこみ、アレンは小さな咳を繰り返す。
「待ってください。どこかにあるはずなんで」
呼吸の落ち着いたアレンは慌ててポケットの中を探りだした。
神田が鼻で笑う。
「てめえのことだ、貰ってばっかで、全部片っ端から食ったんだろ」
「…その通りです」
アレンは心の中で舌打ちし、お菓子なんてありませんよと開き直った。
神田の口角が小さく上がる。
「悪戯だな」
 
アレンは再び地面を蹴った。
 
 
 
うちのアレンさんは標準装備で黒いけど、なぜか神田さんに勝てません。普段は振り回してるのに。私の好みが無意識で出てるんでしょうか?

title by 26度の体温
「神田ー」
ベッドに寝転がったアレンはごろりと転がり体の向きを変えた。肘をつき頭を上げる。
見つめる先には読書に没頭する神田の姿がある。
神田はアレンをちらりとも見ない。完全に意識を本に向けている。その様子にアレンは唇を尖らせた。
「そこまで酷いバカは勉強しても直りませんよー」
冷たく鋭い視線がアレンに突き刺さる。
「今すぐ死ぬか」
「ヤです」
神田は呆れたように目を細め、再び視線を本に戻した。
足をバタバタさせるが、神田の反応はない。アレンは頬を膨らませ、ベッドの上をゴロゴロと転がった。仰向けになり、上目遣いでじとっと睨む。
「さっきから鬱陶しい」
神田が顔も上げず低い声で言う。
「暇なんですよ。ね、鍛錬行きません?」
「一人で行きゃあいいだろ」
「えー」
アレンが不満の声を上げる。
ふと、神田がアレンの方に顔を向けた。珍しく機嫌良さそうにくつりと喉を震わせる。
嫌な予感にアレンは身構える。
「素直に相手してほしいって言えば構ってやるよ」
白い頬に朱が散った。アレンはじっとりした目で神田を睨む。
分かってんなら構ってよ」
神田は僅かに口元を緩め、本を閉じた。
 
 
一切描写はないですが、神田さんは眼鏡を掛けてます。
title by 群青三メートル手前

2010.10.08
任務中(電車で移動中)
 
「おい、モヤシ」
「アレンです。いい加減覚えられるでしょ、いくらバカでも」
「寝ろ」
「は」
「寝不足なんかで足引っ張られるなんか冗談じゃねぇ」
なんでわかったんですか」
「見たらわかる。バカか」
 
「膝枕してくださいよ」

「すみません、冗談です。着いたら起こしてくださいね」
「知るか」
「じゃ、お願いしまーす。おやすみなさい」
 
「おやすみ」


2010.07.20
ふと、アレンはさっきから視界に入らない存在に気付いた。
「神田のゴーレムは?」
辺りを見回しながら神田に問う。その言葉に神田もゴーレムの不在に気付く。
二人は周囲を見渡し自分達に付いて来ているはずの存在を探した。しかし、黒いゴーレムの姿はどこにも見当たらない。
「さっきまでそこらをふらついてましたよね」
「ああ」
神田は不機嫌そうに眉を寄せた。鋭い目つきが更に厳しくなる。
少しの沈黙の後、神田の視線がティムキャンピーに流れた。
「こいつなら何か知ってんじゃねぇか」
二人の視線がティムキャンピーに集中する。けれど、会話から状況を理解しているはずのティムキャンピーはふらふらと空中浮遊を続けている。
「ティム」
アレンが少し尖った声を出した。その横で般若のような雰囲気を纏った神田がティムキャンピーを見据えている。
くるりと二人の方に向き直ったティムキャンピーは何かを口いっぱいに頬張ったままニヤリと笑った。鋭い歯の間から僅かに黒いものが見える。
「吐け」
周りの気温が一気に下がった。声が淡々としているだけに、より一層怖い。
「神田のゴーレムなんておいしくなさそう」
「つか、食い物じゃねぇ」
アレンの言葉に神田が反応した隙にティムキャンピーはふらりとどこかへ行こうとする。
「待て」
それに気付いた神田が尻尾を掴み、引きずり戻した。
その手荒い行為にアレンが顔をしかめる。
「もうちょっと丁寧に扱えませんか」
「先に俺のゴーレムをゴーレムとして扱え」
「てか、早く吐き出さなきゃ。そんなもの食べたらお腹壊すよ。バカも移るだろうし」
神田の怒りも気にせず、アレンは真剣な顔でティムキャンピーに言う。
「てめぇ」


お前はゴーレムでも美味かったら食うのかよ
おいしいなら…、ゴーレムって食べられるのかなぁ



第184夜ネタ
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